ガーデニング

牧野記念庭園

 東京都練馬区にある牧野記念庭園に行ってきました。
 「日本の植物学の父」といわれる植物学者・牧野富太郎博士が30年間暮らした邸宅と庭跡を「練馬区立牧野記念庭園」として整備した庭園で、牧野博士の研究成果やその生活、人となりが偲ばれる展示もあります。

 牧野富太郎は65歳で「博士」になりましたが、実は小学校しか通っておらず大学も出ていません。
 1862年、土佐国佐川村(現在の高知県高岡郡佐川町)の裕福な商家に生まれた富太郎。家業を継いだ後も商売そっちのけで植物の研究に没頭し、日本全国をまわって膨大な植物標本を作製、数多くの植物に命名したり新種を発見しました。
 
 富太郎は地位や名声にはほとんど関心がなく、ただ植物の研究がしたいがために東京帝国大学(現・東京大学)の研究室に入り浸っていましたが、数々の実績により大学から理学博士を授かりました。
 なかなかに破天荒な人生のようです。
 
 この記念庭園は小さな庭園ですが、富太郎が生前集めた貴重な植物、中には外国から導入したものも含め300種類以上の草木類が植えられています。
 富太郎の銅像を囲むように生えている「スエコザサ」は、富太郎が発見した新種の笹で、死去した妻の名「寿衛子」(スエコ・享年55歳)をとって命名されました。

 かなりマニアックというか、普通の植物愛好家にしてみたら初見の珍しい植物が多数植わっている庭園で、以下4枚は「私の知らない植物シリーズ」。


 ラショウモンカズラ

 コバノズイナ

ジョウロウホトトギス

 ヘラノキ

 ラショウモンカズラは、花が「羅生門で切り落とされた鬼女の腕に見えるから」と命名された名前だそうです。
 うーん。牧野博士、もっと他の名前は思いつかなかったのでしょうか。

(高知県立牧野植物園Facebookより)

 ジョウロウホトトギスは漢字で書くと「上臈杜鵑草」。ユリ科ホトトギス属の一つで高知県の渓谷の湿った岩場や崖に自生しているそうです。なぜ「上臈」とつけたのか、その理由は調べてもよくわかりませんでした。
 「上臈」とは奥女中の上級職のことなので、他のホトトギスに勝るその美しさから・・・と思われますが、もしかしたら岩場や崖に生えていることから、「高嶺の花」のような意味合いで上臈と付けたのかもしれませんね。あくまでも私個人の考えですが。

 それにしても、行ったタイミングがほとんど何も咲いていない時期で、見られた花と言えばツツジとスズラン、セッコクくらいなもの。珍しいアツモリソウもありましたが、花は終わった後でした。


 スズラン

 ツツジ

 セッコク
 バラ

 アカンサス、ギボウシなど色々な植物が植えられた花壇。見事に何も咲いてないけど、この一角は結構好きかも。アカンサスが咲いているところを見たいので、来月また来ようかと思います。


 牧野博士が研究・執筆を行った書斎と書庫が再現された「書屋展示室」。書棚や机などは当時のものだそうです。

 記念館の中の常設展示室。牧野博士が植物を採集するために愛用した胴乱(植物採集容器)や研究で使用した顕微鏡、採集した植物標本などの資料が展示されています。


 私がいちばん知りたかった、牧野博士が練馬区に邸宅を置いた理由が展示室に記されていました。
 1923年(大正12年)、牧野61歳のときに起こった関東大震災当時、一家は渋谷に住んでいました。住宅は無事でしたが、生涯を捧げて収集した植物標本などの貴重な研究資料を守るため、郊外に移転することを考えました。
 そこで人づてに紹介されたのが大泉の地。当時は「東京府北豊島郡大泉村上土支田」という地名だったそうです。知人の土地の一角を借り受け、大正15年5月に転居。94歳で永眠するまでの30年間ここを終の棲家とし、「我が植物園」としてこよなく愛しました。

 私も庭をひたすら好きな植物で埋め尽くしているので、富太郎さんの庭に寄せる想いがよく理解できます。 
 ちなみに富太郎が生まれた年って、坂本能馬が土佐藩を脱藩したり、寺田屋事件や生麦事件があった幕末動乱の幕開けのような年。植物の研究に没頭する富太郎の生涯を辿っていると、そんな幕末の騒乱とはまったく無縁な感じがして、どこか別の次元の日本じゃないかと思いもします。
 植物の研究に没頭した日々はきっと幸せに満ちたものだったのでしょう。

 ところで、この牧野富太郎がなんとNHK連続テレビ小説の主人公のモデルになるそうです。タイトルは「らんまん」。来年2023年放送、演じるは神木隆之介さんです。大泉の庭園も登場するのでしょうか。今からとても楽しみです。

⇒「2023年度前期 連続テレビ小説『らんまん』 主演は神木隆之介さん!

2023年4月6日 連続テレビ小説「らんまん」第一週「バイカオウレン」を観ての感想

 主人公は槙野万太郎(演:神木隆之介)という名前で、すぐに熱を出す病弱な少年(初出5歳)という設定。
 家は150年ものあいだ暖簾(のれん)を守ってきた土佐藩随一の酒蔵「峰屋」。大黒柱である祖父と父を相次いで亡くし、母親ヒサ(広末涼子)も病いで伏せっている。
 祖母タキ(松坂慶子)は跡取りである孫に峰屋を手渡すまで死ねないと奮闘し、万太郎を厳しく教育する。一方で、ヒサに対しては情愛のこもった言葉をかける。ただ厳しくて口やかましいだけのお祖母さんではない描き方が素敵。松坂慶子ならではの細かい演技も惚れ惚れします。
 ところで万太郎は裏山にある神社で偶然、坂本龍馬と出会うんだけど、「おいおい、これはちょっと荒唐無稽に過ぎるだろう」と思いました。親戚の心ない言葉に傷ついている万太郎に龍馬が人生の指針となる言葉をかけてくれるなんて、話ができすぎじゃないですか。でも、ディーン・フジオカが格好いいので大目に見ちゃる。
 この先、ジョン万次郎も出てくるらしいんだけど・・・スタッフは花だけでは物語が盛り上がらないと思ってるのかしら。歴史上の偉人とむりやり絡ませるなんて、まるで「青天を衝け」を観ているよう。
 ところで、万太郎の母・ヒサは自分が「一番好きな花」とする花の名前を知らなかったわけだけど、今後のストーリーで花の名前がどのように判明するのかなと興味をそそられます。

⇒家庭画報.com「牧野富太郎博士がこよなく愛した花の一つ。冬の森に咲く妖精『バイカオウレン』

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