10年ほど前、お墓参りの帰りに「金の湯」に立ち寄って以来2度目となる有馬温泉にやってきました。
その時は時間がなくて慌ただしかった記憶しかないので、今度こそ太閤・豊臣秀吉が愛した有馬をゆっくり堪能すべくじっくりとまわってみることにしました。
有馬温泉は六甲山北麓に位置し、標高は最大で500メートルほど。
日本書紀にも登場する日本最古の温泉といわれ、飛鳥時代には舒明天皇(推古天皇の後継。推古は最初の女性天皇で、聖徳太子の叔母として知られる)や孝徳天皇(中大兄皇子、のちの天智天皇の叔父)が湯治に訪れました。
豊臣秀吉が初めて有馬温泉を訪れ湯治を行ったのが1583年「賤ヶ岳の戦い」の後とされています。その後も合戦などの節目ごとに有馬を訪れ、妻や側室を連れて滞在したり、本願寺の顕如などの有力者を接待する場としても有馬温泉を利用しました。織田信雄や蒲生氏郷にも湯治を勧め、滞在費用の面倒もみたとのことです。
◆1537年生誕、1598年没、享年61歳
◆現在の愛知県西部にあたる尾張中村で農民の子として生まれ、織田信長のあとを継いで天下統一を果たす。天皇を補佐する官職として最高位である関白となり、のち豊臣秀次に関白職を譲ってからは「太閤」と呼ばれた。
まずは正午、宿泊先である「かんぽの宿有馬」のフロントで受付を済ませ、駐車場にキャンピングカーを置かせてもらいます。
自転車とバイクを降ろし、いざ「太閤の湯」へ。
実を言うと、この「かんぽの宿有馬」を選んだ一番の理由は、目の前の駐車場が広いこと。有馬温泉には他にも老舗旅館・ホテルが多数建ち並んでいますが、細い坂の途中だったり狭かったりで広い駐車場がほとんどないようなのです。
太閤の湯
「かんぽ」から「太閤の湯」は1.1キロほどの近距離。坂を下り、少し登ると到着です。
この「太閤の湯」は豊臣秀吉や正室ねねの名を借りた温泉と歴史のテーマパークという感じの入浴施設で、有馬の三大泉である金泉・銀泉・炭酸泉をぜんぶ楽しめるそうです(ただし炭酸泉は人工)。

雰囲気としては、東京お台場にあった「大江戸温泉物語」(東京都江東区青海にあったお江戸がテーマの温泉パーク。2021年9月5日に閉館)と似ています。
受付で受け取ったタオルと館内着の入ったバッグを手に更衣室へ。そこで館内着に着替えてエレベータに乗り、2階で館内着を脱いで浴室へという寸法です。
2階の大浴場には金泉・銀泉の混合泉などがあり、そこから木の階段を上って3階へ行くと露天風呂。金泉を満たした「太閤の岩風呂」や人工炭酸泉がありました。
「太閤の岩風呂」は秀吉が作らせた岩風呂(後述)を411年ぶりに再現させたものだそうで、源泉掛け流しとのこと。
湯温が熱くてあまり入っていられないのが難点。また沸かしたお湯特有の臭みとわずかな消毒臭があるので、実際には正真正銘の掛け流しではなく半循環なのではと思います。(写真は太閤の湯公式サイトからお借りしました。)
この金泉は含鉄塩化物泉という鉄分と塩分を含んだ温泉で、赤だしの味噌汁のような赤い色が特徴です。源泉で沸きだした時には無色透明のお湯ですが、空気に触れたことで鉄分が酸化して赤く変わるのです。
◆兵庫県神戸市北区有馬町池の尻292−2 TEL:078-904-2291
◆【営業時間】10:00~22:00(最終入館21:00)
◆入館料【平日】大人2,640円/小人(小学生)1,239円/幼児440円 【土日・祝日】大人2,860円/小人1,430円/幼児550円
◆特定日は別料金、別途入湯税がかかります
◆駐車料金:入庫後4時間まで無料(大型車可)
◆太閤の湯公式サイト
◆年に何回か休館日があるので要注意。ホームページでチェックしてから行くことをお勧めします
炭酸泉源
「かんぽの宿有馬」前の道路から少し下り、急で細い坂道を降りていくと炭酸泉源公園があります。神社のような屋根の下に冷たい炭酸水が湧き出ており、その手前にある飲料場で飲むことができます。
これが有馬温泉を構成する金泉・銀泉・ラジウム泉の銀泉の一つでもあります(銀泉の源泉は他にもあります)。

手ですくって飲むと金気味が口いっぱいに広がり、舌にピリピリした炭酸の刺激を感じました。
なんでも有馬名物炭酸せんべいに使用されているそうです。
美味しいとは言えないけど、もうちょっと味わって飲みたいと思いました。次は折りたたみコップ持参で来よう。
◆兵庫県神戸市北区有馬町字杉ヶ谷1325ー1
◆24時間オープン/無料
◆炭酸泉源保存会ホームページ
ねね像と太閤秀吉像
さて、次に有馬温泉の中心街へと移動。普通の観光っぽいこともせねばと、ねね像・秀吉像を見学。
◆生年不明、1624年没。享年は76、77、83歳などの諸説あり
◆織田信長に仕える武将の娘として生まれ、10代で木下藤吉郎(のちの秀吉)と結婚する。本名はねね、おね、ねいなどの説がある(一般的には「寧」あるいは「ね」という名前で、それに「於(お)」を付けて呼んで「おね」とか、「ね」を2つ重ねて「ねね」と呼んでいたのではと考えられています。当時の女性は手紙の自署に頭の一文字だけ書く習慣があったという説もあります)
◆秀吉が関白に就任してから「北の政所」と称される
◆秀吉とのあいだに子はなかった
◆秀吉が他界した翌年の1599年、それまで住んでいた大坂城西の丸を徳川家康に譲り渡し、京都に移住
◆関ヶ原の合戦の際にも甥・小早川秀秋に対し、徳川側につくよう諭したとされている
対岸の秀吉に視線を向ける於ねさんの表情がなんとも絶妙だと思いませんか。
女癖の悪い夫を監視しているような、咎めているような。今にも「ちょっと、お前さま」と言いそうな顔つきにも見えます。
ねねは多くの女優さんが演じてきましたが、私の中では沢口靖子さんの印象が強いです。
銀の湯
有馬温泉には3つの日帰り専用の入浴施設があり、この「銀の湯」はその一つ。「金の湯」にも行くなら、金の湯・銀の湯2館券がお得です。
しかし、ここのお湯使いは完全な循環のようで、カルキ臭が強くてちょっと残念でした。
◆神戸市北区有馬町1039-1/TEL:078-904-0256
◆【営業時間】9:00~21:00(最終受付20:30分)
◆【定休日】第1・第3火曜日(祝日営業・翌日休)及び1月1日
◆【泉質】炭酸泉・ラジウム泉
◆ボディソープ、リンスインシャンプー、ドライヤーあり/タオル、バスタオル、カミソリ、ハブラシ等は販売
◆銀の湯ホームページ
金の湯
最後に「金の湯」をご紹介! と言いたいところですが・・・
外観の写真を撮り忘れたためノーフォト⤵⤵⤵⤵
印象としては、ここも完全な掛け流しではなく半循環といった感じで、お湯が新鮮ではないです。
公式サイトによると、加水しているため加温し、さらに塩素による消毒もしているとのこと。循環したお湯を加熱して戻しているかどうかは不明ですが、私の印象としてはお湯がなまっているように感じました。入浴客が多いので掛け流しは無理なんだろうか・・・実に残念です。
◆神戸市北区有馬町833/TEL:078-904-0680
◆【営業時間】8:00~22:00(最終受付21:30)
◆【定休日】第2火曜日・第4火曜日(祝日営業、翌日休)及び1月1日
◆【泉質】含鉄-ナトリウム-塩化物強塩高温泉
◆ボディソープ、リンスインシャンプー、ドライヤーあり/タオル、バスタオル、カミソリ、ハブラシ等は販売
◆金の湯ホームページ
太閤の湯殿館
秀吉は有馬温泉好きが高じて、1594年(文禄3年)に自身のための湯治施設を造らせました。それが「湯山(ゆのやま)御殿」と呼ばれるものですが、1596年に起こった伏見大地震で倒壊。慶長年間に再建されましたが、その後は失われ、極楽寺のあたりにあったという話が伝わるのみでした。
それがなんと、1995年(平成7年)1月に起きた阪神淡路大震災によって倒壊した極楽寺の下から、発見されたのです。
この「太閤の湯殿館」では、発掘された湯ぶねの遺構や、瓦、茶器などの出土品、そして秀吉がこよなく愛した有馬温泉の歴史・文化が紹介されています。
ただし残念なことに、秀吉はこの湯殿で入浴することなく亡くなったということです。
権力と財力をそなえた天下人といえども老いと死からは逃れられなかったということですね。秀吉さん、入りたかっただろうなぁ。
↑資料館の正面に建つ極楽寺と太閤小城跡碑。
◆神戸市北区有馬町1642/TEL:078-904-4304
◆【営業時間】9:00~17:00(最終受付16:30)
◆【定休日】毎月第2水曜日
◆ホームページ
かんぽの宿有馬
15時になったので「かんぽの宿有馬」にチェックイン。
実は前夜、「レジオネラ感染症を発症した宿泊者が出たためお風呂の水質検査の結果が出るまで温泉に入浴できない」というメール連絡を受けていました。
自宅を出発する前だったらキャンセルしたでしょうが、すでに神戸まで来てしまっていたためそのまま泊まることにしました。
「太閤の湯」の入館券をくれることや宿泊代金割引といった申し出があってやむなく受け入れることにしましたが、どうしても不満が残る宿泊となりました。
金の湯・銀の湯・太閤の湯に入浴して感じましたが、やはりこういった半循環で完全な掛け捨てではない場合、(「かんぽの宿有馬」がレジオネラの発生源ではないにしても)どうしてもレジオネラ症発生は起こりえるのではないでしょうか。
しかし、フロントの方々の対応やお食事の内容などを総合的にみると、この宿はとてもお買い得感が強く、来年もまた来たいと思うのでした。


ただし、この「かんぽの宿有馬」、温泉街からは少々外れており、決して便の良い場所とは言えません。温泉街との間にある急な登り坂は電動アシスト自転車でも登り切れないほどの勾配でした。
それでも自転車でまわるにはちょうど良い規模の温泉街で、「金の湯」まで直線で450メートルという近距離。チャリダーの私としては自転車での湯めぐりは非常に楽しかったです。
また来年も泊まりに行きたいと思っています。